お電話でのご相談
土日祝日を除く 9:30 〜 18:30

建設業ニュース

日本建築センターのRC造建築物「耐用年数評価」を徹底解説|488棟の約3分の2が残存耐用年数100年超

2026年8月、 日本建築センターが実施してきたRC造建築物の耐用年数評価について、 注目すべき実績が明らかになりました。

2026年3月末までに評価を終えた488棟のうち、 調査時点からみた残存耐用年数が「100年超」と評価された建築物は322棟、 全体の65.9%に達しています。 しかも、 築50~70年の建築物で100年超の割合が特に高いという、 直感とは異なる結果も示されました。 背景には、 古い建築物で多く使われた外壁の仕上げモルタルによる中性化抑制効果があります。

今回はGLC Jobが、 日本建築センターの概要から評価方法、 488棟の評価結果、 自治体の施設マネジメントへの波及、 そして建設業界で働く人にとっての意味まで詳しく解説します。

RC造建築物の耐用年数評価が注目される理由

約3分の2が「残存耐用年数100年超」という結果のインパクト

日本建築センターは2019年5月にRC造建築物の耐用年数評価業務を開始し、 2026年3月末までの約7年間で488棟の評価を完了しました。 対象建築物の平均築年数は52.7年です。 そのうち公共施設が425棟で全体の87.0%を占め、 用途別では学校が345棟・70.6%と最も多く、 複合施設52棟、 庁舎43棟などが続いています。

特に目を引くのが残存耐用年数の分布です。

残存耐用年数 棟数 全488棟に占める割合
0~20年未満 35棟 約7.2%
20~40年未満 27棟 約5.5%
40~60年未満 24棟 約4.9%
60~80年未満 17棟 約3.5%
80~100年以下 17棟 約3.5%
100年超 322棟 65.9%
評価不能 46棟 約9.4%

出典:日本建築センターBCJ技研レポート Vol.8 2026.4.をもとにGLC Job作成。

ここで最も注意したいのは、 「100年超」が新築時から100年間という意味ではなく、 調査した時点から100年を超える残存耐用年数を指していることです。 例えば築60年の建築物が「100年超」と評価された場合、 現在の劣化状況などをもとにした評価上は、 中性化が所定の状態に達するまで調査時点から100年を超える期間が推計されるということになります。 単純な時間軸で考えれば、 竣工後160年を超える領域まで評価上の基準に達しない可能性を示す、 非常に長い数字です。

2025年度の評価棟数は208棟と、 2024年度の約2.5倍に増加しました。 日刊建設工業新聞は、 その背景として建築費の高騰を挙げ、 日本建築センター側の見解として、 公立小中学校などで建て替え事業の入札が成立せず、 長期活用へ方針を転換する自治体が増えている状況を伝えています。

「法定耐用年数」と「建物が使える期間」は別物

RC造建築物を考える際、 混同されやすいのが「法定耐用年数」です。 国税庁の耐用年数表では、 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の建物について、 事務所用は50年、 住宅用は47年、 店舗・病院用は39年など、 用途ごとに耐用年数が設定されています。

しかし、 この数字は主として減価償却を計算するために用いられる税務上の期間であり、 「50年経過したらRC造建築物は物理的に使えなくなる」という意味ではありません。 日本建築センター自身も、 これまで税務上の法定耐用年数が強く意識された結果、 比較的短い築年数でスクラップ・アンド・ビルドが繰り返されてきたと指摘しています。

今回の488棟は平均築年数52.7年で、 日刊建設工業新聞が比較例として挙げたRC造事務所の法定耐用年数50年をすでに上回る水準です。 それでも65.9%が、 調査時点からさらに100年超の残存耐用年数という評価になりました。 ここから分かるのは、 税務上の期間と、 実際の構造体の劣化状態を工学的に評価した期間は切り分けて考える必要があるということです。

建物を建て替えるか、 改修して使い続けるかという判断には、 築年数だけでなく、 中性化、 鉄筋腐食、 コンクリート強度、 仕上げ材、 雨がかり、 修繕履歴、 耐震性能、 設備の状態、 利用ニーズ、 改修費と建て替え費などを総合的に見る必要があります。 耐用年数評価は、 その中でも構造体の長期活用可能性を判断するための重要な材料として位置付けられます。

参考・出典:
日本建築センター「鉄筋コンクリート造建築物の耐用年数評価」/BCJ技研レポート Vol.8 2026.4./ 日刊建設工業新聞/ 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」

  • 大手求人サイトで全国トップクラスに輝いたアドバイザーが在籍
  • 年収1000万円以上になった方も
  • 年収350万円以上の大幅UP事例もあり
  • 業界特化で「分かっている」提案。企業知識が段違い
  • 休日や夜間でも専属アドバイザーが対応

日本建築センターとはどのような組織なのか

1965年設立、建築分野の評価・審査を幅広く担う

日本建築センターは1965年8月7日に設立され、 2025年8月には設立60周年を迎えました。 2026年8月1日現在の役職員数は211人で、 本部を東京都千代田区、 大阪事務所を大阪市中央区に置いています。

業務範囲は非常に広く、 建築確認・検査、 住宅性能評価、 省エネ適合性判定、 BELS評価、 構造計算適合性判定、 建築基準法に基づく性能評価、 BCJ評定、 耐震診断評定、 既存建築物の法適合性調査、 エンジニアリング・レポート、 調査研究などを行っています。 RC造建築物の耐用年数評価も、 この技術評価事業の一つです。

また、 日本建築センターは国土交通大臣の指定確認検査機関、 指定構造計算適合性判定機関、 指定性能評価機関など複数の指定・登録を受けています。 建築基準法上の性能評価については、 2000年に当時の建設大臣から指定性能評価機関の指定を受けています。

こうした背景を考えると、 耐用年数評価のポイントは、 単にコンクリート試験の数値を機械的に当てはめるだけではないことにあります。 現地確認、 調査計画、 コア採取位置の決定、 各種試験、 調査結果の工学的検証を経て、 学識経験者などが参加する耐用年数評価委員会で審議し、 評価書を発行する仕組みになっています。

建設業界で働く人にとっても、 日本建築センターは確認・構造・省エネ・性能評価・既存建築物といった複数分野に関わる存在です。 今回の発表は一つの耐久性評価にとどまらず、 日本の建築行政やストック活用が「新しく建てること」だけでなく、 「既存建物の状態を客観的に確認し、 適切に使い続けること」へ比重を広げている流れを見る材料にもなっています。 これはGLC Jobとしても、 今後の建設業界を考えるうえで注目したい動きです。

耐用年数評価が始まった背景には「建築ストックの長期活用」がある

日本建築センターが耐用年数評価業務を始めたのは2019年です。 その背景について同センターは、 日本にはすでに膨大な建築ストックがあり、 環境負荷や財政負担の軽減という観点から、 既存建築物の長寿命化・長期活用が強く求められていると説明しています。

既存建物の長期活用を検討するとき、 所有者にとって大きな問題になるのが「この躯体はあとどれくらい使えるのか」です。 数十億円規模の建て替えや大規模改修を判断する自治体や企業にとって、 単純な築年数だけでは意思決定が難しくなります。 そのため日本建築センターは、 長期活用を検討する初期段階で、 構造体に今後どの程度の耐用年数が期待できるかを、 実際の調査と工学的な検証によって把握することが重要だとしています。

同センターが想定する活用場面は、 公共施設だけではありません。 既存建築物の売買や改修投資、 それに対する金融機関の融資判断、 高経年公共施設の建て替え時期の延長・分散、 高経年分譲マンションの建て替えと改修の比較、 不動産証券化における投資判断、 劣化程度に応じた合理的な改修計画など、 民間不動産にも幅広く及びます。

つまり、 耐用年数評価の本質は「古い建物を必ず残すための制度」ではありません。 建て替えるべき建物と、 適切な改修を行えば長期利用できる建物を、 技術的な根拠をもって見分けるための情報を増やすことにあります。

これまで「築50年だからそろそろ建て替え」と判断されていた建物について、 「実際に躯体を調べたところ、 まだ長期間利用できる可能性が高い」という選択肢が生まれれば、 改築時期の平準化や投資計画の見直しも可能になります。 反対に劣化が進んでいる場合は、 その事実を把握したうえで改修や更新を優先できます。 この「状態に基づいて判断する」という考え方が、 今後の建築ストック活用ではますます重要になりそうです。

参考・出典:
日本建築センター「プロフィール」 / 日本建築センター「鉄筋コンクリート造建築物の耐用年数評価」/BCJ技研レポート Vol.8 2026.4.

RC造建築物の耐用年数評価はどのように行われるのか

コンクリートの「中性化」と鉄筋腐食はなぜ重要なのか

RC造は「鉄筋」と「コンクリート」を組み合わせた構造です。 通常、 コンクリート内部は強いアルカリ性を保っており、 その環境によって内部の鉄筋が腐食から守られています。 しかし、 大気中の二酸化炭素がコンクリート内部に入り込むと、 表面側から徐々にアルカリ性が失われる「中性化」が進行します。 中性化が鉄筋の周囲まで達すると、 鉄筋を腐食から守っていた環境が失われ、 条件がそろえば腐食しやすくなります。

鉄筋が腐食して膨張すれば、 周辺コンクリートのひび割れや剥離・剥落などにつながり、 RC造の耐久性を低下させる可能性があります。 このため、 中性化がどこまで進んでいるかは、 既存RC造の長期利用を検討するうえで重要な指標の一つになります。

日本建築センターの評価では、 RC造およびSRC造建築物について、 屋外側にある最外側鉄筋のおおむね5%程度に中性化が到達するまでの「調査時点からの年数」を耐用年数として推計します。 対象部位は原則として、 建築基準法施行令第79条で鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さ30mmが規定される、 屋外に面した耐力壁・柱・梁です。 評価上はコンクリートのかぶり厚さを30mmとして、 中性化の進行を推計します。

評価のためにはコア供試体を採取します。 中性化試験だけでなく、 圧縮強度、 仕上げ材の種類や厚さ、 塩化物含有量、 含水率、 はつり調査による鉄筋腐食状況などを確認し、 建物の立地や状態によっては追加調査も行われます。

中性化の進行は一般に時間の平方根との関係で扱われ、 日本建築センターの資料でも、 中性化深さをC、 時間をt、 中性化速度係数をAとした関係を用い、 採取コアの試験結果から評価用の中性化速度係数を求めています。 つまり築年数を見ただけではなく、 その建物のコンクリートが実際にどの程度の速度で中性化してきたのかを現地データから把握することが大きな特徴です。

現地確認から評価書まで、標準的には5~6ヵ月程度

日本建築センターの標準的な業務は、 事前相談から始まります。 対象建物の築年数、 評価書の使用目的、 既存図面、 修繕履歴、 過去の耐震診断や劣化調査報告書などを確認したうえで評価を依頼し、 調査会社を手配します。

重要なのがコアを「どこから採るか」です。 耐用年数評価委員会の学識経験者などが現地を確認し、 建物の劣化状態、 階、 方位、 雨がかり、 外壁仕上げの種類などを踏まえて採取位置を指定します。 その位置で調査会社がコアを採取し、 圧縮強度試験や中性化試験などを実施します。 調査報告書を日本建築センターへ提出した後、 耐用年数評価委員会が工学的検証を行い、 評価書が発行されます。 標準的な業務期間は、 評価依頼から評価書発行まで5~6ヵ月程度とされています。

評価には「現況評価」と「改修計画評価」の2種類があります。

評価 主な考え方
現況評価 現在の状態をもとに、今後も通常の点検・補修を行うことを前提として構造体の耐用年数を評価
改修計画評価 現況評価に加え、劣化抑制に有効な改修と適切な点検・補修による中性化進行の抑制効果を反映

一方、 この評価には明確な範囲があります。 日本建築センターは、 中性化以外の劣化外力である塩害、 凍害、 アルカリシリカ反応、 化学的浸食などが支配的でないことを前提としており、 法適合性、 構造安全性・耐震性能、 耐火性を評価するものではありません。 また、 算定した耐用年数を保証する制度でもありません。

したがって、 長期活用を判断する場合には「耐用年数100年超だから耐震診断は不要」といった考え方はできません。 耐久性評価、 耐震診断、 外壁調査、 設備劣化、 法適合性などを目的に応じて組み合わせる必要があります。 建設実務者にとっては、 この評価の「できること」と「できないこと」を正しく理解することが重要です。

参考・出典:
日本建築センター「鉄筋コンクリート造建築物の耐用年数評価」 / 日本建築センター「鉄筋コンクリート造建築物の耐用年数評価のご案内」

488棟の耐用年数評価から見えてきたこと

488棟の結果で興味深いのは、 築年数が長くなるほど単純に残存耐用年数が短くなったわけではない点です。 むしろ築50~70年の建築物で「100年超」が多く、 その背景として外壁モルタルの影響が浮かび上がりました。

築50~70年で「100年超」の割合が特に高かった

対象488棟の築年数分布は、 20~30年未満6棟、 30~40年未満39棟、 40~50年未満116棟、 50~60年未満197棟、 60~70年未満124棟、 70~100年未満6棟でした。 中心は築50~70年の建築物です。

そのうち、 残存耐用年数100年超となった棟数を見ると、 築50~60年未満では197棟中144棟、 73.0%。 築60~70年未満では124棟中94棟、 75.8%でした。

築年数 評価棟数 残存耐用年数100年超
30~40年未満 39棟 21棟
40~50年未満 116棟 59棟
50~60年未満 197棟 144棟
60~70年未満 124棟 94棟

出典:BCJ技研レポート Vol.8 2026.4.日刊建設工業新聞

通常であれば「築60年の建物より築40年の建物の方が状態は良いだろう」と考えたくなります。 しかし結果は一様ではありません。 

しかも日本建築センターの分析では、 築50年以上のグループはコンクリート強度自体が比較的新しいグループより総じて低い一方、 中性化が抑えられ、 残存耐用年数が長い建物が多くなりました。 逆に比較的新しいグループではコンクリート強度が高くても、 外壁の仕上げモルタルがないことで中性化が進み、 残存耐用年数が短い建物が一定数確認されています。

この結果は、 RC造の耐久性を「コンクリートの強度が高いか」「築年数が何年か」という一つの数字だけで判断できないことを示しています。 材料、 施工方法、 表面仕上げ、 雨がかり、 含水状態、 維持管理履歴などの条件が重なって、 その後の劣化速度が変わります。

築古RC造を守っていた「仕上げモルタル」

では、 なぜ築50~70年の建物で好結果が目立ったのでしょうか。

日本建築センターは、 その大きな要因として外壁の「仕上げモルタル」に注目しています。 残存耐用年数100年超と評価された建物では、 モルタル仕上げを持つ割合が80.3%でした。

日刊建設工業新聞で日本建築センターの元木周二氏は、 築50年以上の建物が建設された時代には、 当時の型枠精度などを補うため、 コンクリート表面にモルタルを塗って平滑に仕上げるケースが非常に多かったと説明しています。 モルタルもセメント、 砂、 水を中心に構成されるアルカリ性の材料であるため、 その層が外側に存在することでコンクリート本体への中性化進行を抑える効果が表れたと分析されています。

さらに2025年度の日本建築センターの研究では、 コンクリート表層部のpHを詳細に確認したところ、 屋外側では降雨によって仕上げモルタル由来の水酸化カルシウムがコンクリート表層部へ供給されている可能性も示されました。 同センターは引き続き、 中性化の判定方法や含水率などを研究し、 評価精度の向上を進めています。

一方で、 「モルタルを塗れば必ず100年以上もつ」という意味ではありません。 建物ごとに施工品質、 モルタルの状態、 ひび割れ、 雨水浸入、 補修履歴などは異なります。 今回の488棟についても、 46棟は中性化がすでに屋外側の最外側鉄筋まで到達しており、 残存耐用年数を計算できない「評価不能」とされました。

ここから建設実務者が受け取るべきメッセージは、 「築年数だけで建物を判断しない」ということでしょう。 築60年でも状態が良い建物はあり、 築40年でも中性化が進んでいる建物があります。 既存建築物の時代には、 竣工年や設計図だけでなく、 実際の建物から得られるデータを基に判断する重要性が一段と高まっていると考えられます。

参考・出典:
BCJ技研レポート Vol.8 2026.4./ 日刊建設工業新聞/日本建築センター「鉄筋コンクリート造建築物の耐用年数評価」

\ 誰かに聞いてほしい悩みはありませんか/

無料でアドバイザーがお聞きします

自治体の施設マネジメントはどう変わっていくのか

評価実績の87%を公共施設が占めるように、 耐用年数評価はすでに自治体の施設政策に入り始めています。 単に建物を長く使うだけではなく、 建て替え時期を分散し、 限られた財源の中で投資を優先順位付けする手段として活用されつつあります。

「古くなったら建て替える」から「調べてから決める」へ

公共施設、 とりわけ学校は、 高度経済成長期など特定の時期に多数整備された地域が少なくありません。 その建物が一斉に更新期を迎えれば、 自治体は多額の建て替え費用を同時期に負担することになります。 滋賀県も、 高度経済成長期に整備された公共施設の老朽化を課題として挙げ、 人口減少や財政負担の見通しを踏まえながら中長期的な施設マネジメントを進めています。

そこで出てくる考え方が、 「建て替えられる順に建て替える」のではなく、 「躯体がまだ使える施設は改修して長く使い、 建て替えが必要な施設へ投資を集中する」という方法です。

実際、 日本建築センターの2026年版技研レポートでは、 耐用年数評価の活用が滋賀県の「公共施設等マネジメント基本方針」、 足立区の学校施設に関する計画、 渋谷区の一般建物施設長寿命化計画などに盛り込まれたことが報告されています。 日刊建設工業新聞も、 横浜市や埼玉県坂戸市が学校施設の長寿命化に耐用年数評価を取り入れているとしています。

坂戸市の学校施設長寿命化計画は、 法定耐用年数が税務上の減価償却のためのものであり、 使用可能年限そのものではないと整理したうえで、 日本建築センターによる耐用年数と長期活用に向けた所見を踏まえ、 可能な限り多くの学校施設で躯体の超長寿命化を図る方針を示しています。

滋賀県も2026年3月に新しい公共施設等マネジメント基本方針を策定しました。 県は限られた財源の中で建築物の「質・量・費用」を最適化するファシリティマネジメントを進め、 更新・改修方針や長寿命化ガイドラインと組み合わせて施設管理を行っています。 策定段階の資料では、 建築後おおむね50年以上を経過した施設について、 一律に建て替えるのではなく、 原則として耐用年数評価を行い、 構造躯体が健全であれば大規模改修も検討する方向性が示されていました。

この流れが広がれば、 建築ストックの管理は「築年数ベース」から、 「状態・リスク・コストを組み合わせて判断する方式」へさらに移行していく可能性があります。

「100年超」でも定期点検と改修は必要

耐用年数評価を理解するうえで、 足立区の2026年の取り組みは非常に参考になります。 同区は、 学校施設を安全に長持ちさせることに加え、 建設費高騰への対応、 改築・大規模改修費の分散化を目的として耐用年数評価を実施しています。

2025年度に評価した7校・計46棟では、 36棟が「100年超」と評価されました。 一方、 評価不能が4棟、 20年未満が1棟、 20~50年が4棟、 51~100年が1棟と、 同じ学校群の中でも結果には幅があります。

注目したいのは、 その後の運用方法です。 足立区では、 耐用年数が20年以上なら目標使用年数を最長20年間延長する方針ですが、 仮に100年超と評価されても、 そのまま100年間使い続けるのではありません。 評価より短い間隔で劣化状態を確認し、 延長した目標使用年数に到達する前には再評価を行うとしています。

また「評価不能」であっても、 それだけで直ちに使用不能になるわけではありません。 足立区の説明では、 中性化が鉄筋まで到達して具体的な到達年数が計算できなくても、 鉄筋腐食が軽微な場合には、 防水性向上などの補修を行いながら利用を続けられるケースがあります。 一方、 鉄筋腐食が進んでいる場合は、 専門家の意見を踏まえて修繕方法や改築の要否を個別に判断します。

この運用は、 「評価結果を建て替えか継続利用かの二択に使う」のではなく、 調査→補修→点検→再評価という継続的な建物管理に組み込む考え方と言えます。

建設業界にとって、 この変化は重要です。 新築工事だけでなく、 既存建物の調査、 診断、 設計、 外壁改修、 防水、 耐震改修、 設備更新、 維持保全、 再評価など、 建物のライフサイクル全体に仕事が広がる可能性があるからです。 自治体が施設を長く使うほど、 「建てて終わり」ではなく「状態を把握しながら性能を維持する」仕事の重要性が高まるとGLC Jobでは考えています。

参考・出典:
足立区「学校施設における耐用年数評価の実施状況について」 / 滋賀県「公共施設等マネジメント」/坂戸市「学校施設長寿命化計画」/日刊建設工業新聞

RC造建築物の長期活用は今後どこまで進むのか

評価精度を高める研究も続いている

今回の「100年超65.9%」という結果だけを見ると、 RC造の寿命について一つの結論が出たようにも見えます。 しかし日本建築センターは、 評価手法そのものの精度をさらに高める研究を続けています。

2025年度には、 湿式で採取したコンクリートコアによる含水率測定の可能性、 中性化域におけるpH変化、 乾式仕上げによる外壁改修後の含水率と中性化深さなどを検証しました。 湿式コアでは乾式コアより含水率が0.5~0.7%程度高くなる傾向が確認され、 コア径が大きいほど差が小さくなることなども報告されています。

また、 既存外壁を空気層を介してアルミパネルやセラミックタイルなどで被覆した乾式仕上げ外壁については、 中性化自体は速く進む一方、 含水率が1~3%と低い状態になり、 鉄筋腐食を抑制する効果が確認されたとしています。 これは、 「中性化の深さ」だけではなく、 鉄筋腐食に関係する水分状態も長寿命化を考えるうえで重要であることを示す研究です。

ここは今後の評価の方向性を見るうえで非常に興味深いポイントです。 現在の耐用年数評価は中性化進行を中心とする仕組みですが、 実際の建物では中性化、 含水状態、 仕上げ材、 ひび割れ、 鉄筋腐食などが相互に関係します。 日本建築センターは2026年度も評価データを分析し、 評価精度向上と長期活用支援の充実に取り組むとしています。

建て替えと長寿命化を使い分ける時代へ

長寿命化が進むからといって、 建て替えが不要になるわけではありません。 耐震性能が不足している建物、 機能面で現代のニーズに対応できない建物、 設備や躯体の劣化が著しい建物、 複合化や規模適正化など建て替えでなければ解決しにくい課題を抱える施設もあります。

滋賀県の方針でも、 耐用年数評価による長寿命化を検討する一方、 防災面での機能強化や施設の複合化、 狭隘化への対応など、 建て替えでなければ課題を解決できない施設は更新する考え方が示されています。 つまり、 目的は「何でも残すこと」ではなく、 建て替えと改修の選択を合理化することです。

横浜市でも、 2026年に公表された学校施設の長寿命化計画改定に関する業務資料の中で、 日本建築センターの耐用年数評価などを参考にした効率的な評価方法の検討や、 建て替えのみの場合と長寿命化改修を組み合わせた場合の将来コスト比較が求められています。

このように、 耐用年数評価は単なる「建物診断」から、 公共投資の意思決定を支えるツールへ用途が広がり始めています。 評価で長期活用できると判断された建物は改修し、 その分の財源や施工能力を、 本当に建て替えが必要な施設へ振り向ける。 結果として大量の更新工事が一時期に集中することを避けるという考え方です。

実際の築50~70年級の建物を大量に調査した結果、 残存耐用年数100年超が多数確認された事実は、 既存RC造の価値を再考する重要な材料です。 今後、 民間オフィス、 共同住宅、 商業施設などでも状態に基づく評価が広がれば、 不動産売買、 改修投資、 融資、 マンション再生といった分野への波及も考えられます。 日本建築センター自身も、 こうした用途を耐用年数評価の活用場面として想定しています。

参考・出典:
BCJ技研レポート Vol.8 2026.4./ 日本建築センター「鉄筋コンクリート造建築物の耐用年数評価」/横浜市「学校施設の長寿命化計画改定に係る業務資料」

建設業界で働く人にとって今回の動きが意味すること

新築だけでなく「既存建物を診る・直す・管理する」技術が重要になる

従来、 建設業界の代表的な仕事としてイメージされやすかったのは新築工事です。 しかし、 既存建築物の長期利用が進めば、 建物完成後の仕事の重要性が高まります。

耐用年数評価だけを見ても、 建物図面や修繕履歴の確認、 現地調査、 コア採取、 圧縮強度試験、 中性化試験、 鉄筋腐食調査、 改修計画策定など複数の専門業務が必要です。 その後、 長期活用するとなれば、 外壁改修、 防水工事、 ひび割れ補修、 設備更新、 耐震改修、 定期点検などが継続的に発生します。

分野 長寿命化で重要になる主な業務
建築施工管理 外壁・防水・内装・大規模改修などの工程、品質、安全、原価管理
建築設計 既存条件を生かした改修設計、用途変更、機能更新
構造分野 耐震診断、補強設計、既存躯体の状態把握
建物調査・診断 中性化、鉄筋腐食、ひび割れ、外壁、劣化状況の確認
コンクリート・材料分野 コア採取、圧縮強度、中性化、塩化物量などの試験
設備施工・保全 空調、給排水、電気、防災設備などの更新・省エネ化
ファシリティマネジメント 修繕履歴、LCC、更新時期、施設情報の管理

これらはすべて、 一棟の建築物を「建設して完成させる」という従来の時間軸よりも長い視点で建物に関わる仕事です。 足立区の例では、 耐用年数100年超という評価であっても20年単位で目標使用年数を見直し、 再評価を行う考え方が採用されています。 つまり長寿命化とは、 放置して長く使うことではなく、 継続的に調査・改修・管理することによって長く使うことです。

特に、 既存建物では新築以上に現場ごとの差が大きくなります。 図面と現況が異なる、 過去の改修履歴が完全に残っていない、 部分ごとに劣化状態が違うといった条件の中で、 現場を確認して施工方法を組み立てる能力が必要になります。

今回の488棟の結果は、 そうした「既存建物を診る力」「状態に応じて直す力」が、 今後さらに重要になる可能性を示す材料と言えるでしょう。

長寿命化時代のキャリアでは「建物のライフサイクル」を理解することが強みになる

建設業界でキャリアを考えている人にとって、 今回の話題から意識したいのは「新築か改修か」という二者択一ではなく、 両方を理解することです。

新築施工管理の経験があれば、 躯体、 防水、 外壁、 仕上げ、 設備がどのようにつくられるかを理解しています。 その知識は、 既存建物で「どこがどう劣化し、 どのように直すべきか」を考える際にも生きます。 反対に改修・維持管理の経験者は、 建物が完成後にどのように変化していくのかを実務で知っていることが強みになります。

日本建築センターが今回示した結果でも、 コンクリート強度の大小だけでは残存耐用年数を説明できず、 外壁仕上げなどが中性化進行に大きく関係していました。 設計時・施工時に選択した材料や納まりが、 数十年後の建物の状態を左右し得るということです。

だからこそ、 設計、 施工、 維持管理を別々の仕事として見るのではなく、 「この仕様で建てると数十年後どうなるか」 「この補修をすると次の20年間をどう管理できるか」というライフサイクル視点を持つ技術者の価値は高まっていくとGLC Jobでは考えています。

日本建築センターの評価が自治体の長寿命化計画や施設マネジメントへ実際に組み込まれ始めていることも見逃せません。 滋賀県や足立区などでは、 耐用年数評価を政策上の意思決定に活用する動きが進んでいます。 こうした流れが広がれば、 公共建築の改修、 維持保全、 調査診断、 ファシリティマネジメントなどに携わった経験は、 建設業界におけるキャリアの選択肢を考えるうえでも、 より重要な専門性になっていく可能性があります。

一方で、 新築の役割が小さくなるという話ではありません。 耐用年数評価によって「長期活用に向く建物」と「更新を優先すべき建物」を選別できれば、 限られた人材や予算を必要な新築案件へ集中しやすくなる側面もあります。 今後の建設技術者には、 新築をつくる技術と既存ストックを生かす技術の双方が求められる時代が近づいていると言えるでしょう。

参考・出典:
日本建築センター「鉄筋コンクリート造建築物の耐用年数評価」/BCJ技研レポート Vol.8 2026.4./ 足立区「学校施設における耐用年数評価の実施状況について」 /滋賀県「公共施設等マネジメント」

まとめ

日本建築センターが2019年から実施してきたRC造建築物の耐用年数評価では、 2026年3月末までに評価を終えた488棟のうち322棟、 65.9%が、 調査時点からみた残存耐用年数「100年超」と評価されました。 特に築50~60年未満では73.0%、 築60~70年未満では75.8%が100年超となり、 「古い建物ほど残りの耐用年数が短い」という単純な関係ではないことが明らかになりました。

その背景として注目されているのが、 築50年以上のRC造で多く採用されていた外壁の仕上げモルタルです。 比較的新しい建物よりコンクリート強度が低くても、 モルタルが中性化の進行を抑えたことで、 長い残存耐用年数につながったと日本建築センターは分析しています。

実際に滋賀県、 足立区、 坂戸市、 横浜市などでは、 耐用年数評価や同様の考え方を公共施設・学校施設のマネジメントへ活用する動きが進んでいます。 建築費の高騰や大量の既存ストックを抱える状況の中で、 建て替えと長寿命化を適切に使い分け、 投資時期を分散する考え方は、 今後さらに重要になる可能性があります。

そして建設業界で働く人にとっては、 新築だけでなく、 既存建物の調査・診断、 改修設計、 耐震改修、 外壁・防水改修、 設備更新、 施工管理、 施設保全、 ファシリティマネジメントといった分野の重要性が一層高まることを示す動きでもあります。

建物を「つくる」技術に加え、 「診る」「直す」「守る」「使い続ける」技術まで理解すること。 RC造建築物が100年を超える時間軸で利用される可能性が現実味を帯びる中、 建築物のライフサイクル全体を見渡せる技術者は、 これからの建設業界でますます欠かせない存在になっていくとGLC Jobでは考えています。

有料職業紹介(許可番号:13-ユ-316606)の厚生労働大臣許可を受けている株式会社ゼネラルリンクキャリアが運営しています。

ゼネラルリンクに相談を

-建設業ニュース

© 2026 施工王 Powered by AFFINGER5